常々思うのは、ドラマやアニメで定番化している「1クール=3ヶ月」は短いということです。
日常回が少ない
1クールですと、話数としては10回程度で終わってしまいます。
1話で登場人物の出会いや紹介のエピソードがあり、5・6話くらいからラスボス的なものが登場して攻防が始まるので、いわゆる「日常回」が3話分くらいしかない。
登場人物に対する愛着も湧かないまま何やら重大局面を迎え、完全に把握できていないまま終わるというパターンが増えているように思えます。
やたらと絆する
「日常回」が削られる割に、昨今の流行りなのか、やたら「絆」や「バディ」が強調されることが多いです。
しかし、前述の通り登場人物に愛着が持てていないばかりか、作中の描写でも登場人物同士が接近している様子があまり描かれないまま「絆する」ので、どうにも違和感が拭えません。
僕自身が1年編成の特撮ドラマに慣れていることもあると思いますが、やはり10話は短すぎるように思えます。
「半沢直樹」は組織モノであることが強み
今期の大ヒット作である「半沢直樹」も全10話ですが、上記のような問題点を感じずに楽しめているように思えます。
続編であり、前作からの登場人物の人間関係が出来上がっている点はもちろんあります。しかし、今作は「組織モノ」であることが大きいと思われます。
- 出会い
何十年も務めている銀行員なので、新しい出会いのエピソードを丸ごとカットできる。視聴者にとって目新しい登場人物も「以前からの同僚」の一言で説明が付き、あまり違和感がない。取引先なども「誰々の紹介」など一定の繋がりがあった上での出会いである - 絆
作中で描かれていない部分で数年単位のバックボーンがあり、職場内が急に一致団結することにも違和感がない。作中の必要最小限のエピソードで半沢が信頼を得ている描写があれば十分 - 視聴者の経験
取引先など、新しい登場人物との急接近は「ビジネスの場」であればままあることなど、視聴者側の経験で見えないエピソードを補完できる
同じような構図は、設定上で何十年もの人間関係が成立しているホームドラマや、学園モノでも言えると思います。
短い話数で説得力を持たせるなら「偶然の、新たな出会い」がとにかく邪魔になり、「すでに出来ている人間関係」のある一部を切り取ったり、そこに1人だけ異分子が紛れ込むなどの構図で描くしかないでしょう。
または、初めから1つの事件・2~3人の人間関係に焦点を当て、全10話を掛けて出会いから解決までを一点集中で描く作品にも人気が集まる傾向にあると思います。
せめて「分割数クール」ができないものか
アニメではずいぶん前から行われている手法として、1~2クールで大きい物語の前半を描き、好評であれば後半を制作・不評であれば撤退するという「分割クール」という放送形態を模索していました。
声優よりスケジュールの厳しい俳優を使うドラマにおいては、そのような「様子見」は難しいかもしれませんが、これに近い手法を模索してスケールの大きい物語を描くことは叶わないでしょうか。
一方で海外ドラマは、好評なものほど「シーズン〇〇」として次々に続編が制作される手法もありますが、こちらは続編が進むごとに蛇足になったり、俳優の降板などで原型を留めなかったり、「おかしい方向」に進むなどの弊害もあります。
しかし、現状の1クールで次々交代という形態は、登場人物に愛着の持てない、小粒の作品しか生まれない悪循環に陥ってるように思います。
実績のない新作に2クール以上のリソースを割けないという売り手側の事情も理解できますが、なんとも悩ましい問題に思えます。