「シャイニー・シュリンプス!愉快で愛しい仲間たち」というフランス映画を観たのでゲイ目線の映画評をやります。
邦画ともアメリカ映画とも違うフランス映画を感じる
話の大筋は、ゲイ差別主義者の競泳選手がゲイの水球チームとなんだかんだで打ち解けていくというベタなもの(実話が元というのも含めてベタ)。
家族(同性カップルで養子をとっている)のために試合を棄権したセドリックの顛末や、そもそもメインストーリーであったはずのゲイゲームスの結末がはっきりしないままなど、色々と投げっぱなしなまま終わっていくのが邦画やアメリカ映画ではあまり見ないな…というのが第一の感想。
「本当の主題」は別の所にあり、ラストシーンはそれなのですが、恐らく実話に絡んだ部分が「そこ」で「それ」を言いたかったから他はどうでも良かったのかな…とか。
もちろん回収されなかった伏線にも想像の余地があるので観客がそれぞれ考えればよいものなのですが、それ自体が「分かりやすさ」を優先される邦画その他とは違っていて新鮮だったなと。
フランス映画に詳しいわけじゃないのでこの作品だけなのかもしれませんが、これが許容されるのがフランスだとすると…やはりお国柄なのかなと。
ステレオタイプのゲイ描写から個々の事情へ
予告編の時点から気になっていたのが、チームが「ギャーギャーうるさいオカマ」というゲイのステレオタイプの描写であった点なのですが、中身を見ると「それだけではない」という部分はしっかりしていました。
特に最年長のジョエルは年齢からもLGBTの啓蒙活動に没頭していた世代でそれに誇りを持っており、「自分たちが切り開いた」ゲイの権利の中でポジティブな人生を謳歌する後輩たちに嫉妬の念を抱いていたり、「考えが古い」と否定される描写が「あるなー」と思ってしまいました。
それでいて自分よりもはるかに華やかで発言力もあるトランスジェンダーのフレッドに、嫉妬のあまり差別発言を行うなど自己矛盾も抱えています(偏屈になった事情はチームメイトもある程度は理解しています)
そんな彼も終盤で若い男とちょっといい感じになって羨ましかったですが…アレは何か裏があると思ったら、単に対戦相手だったというだけで金目的や作為的なものはなかったので、単純に「いい出会い」だったのかよと…羨ましいな!
このジョエルがゲイの描写という点でかなり良いエッセンスになっていました。
セクシー面ではそこまでではなかった
水球はブーメランパンツが基本になっている競技なのでセクシー面も期待していたのですが、全体の平均年齢が高めで筋肉質の登場人物が少なかったこともあり「おじさんチーム」という感じで僕的にはそこまで嬉しくはなかったですかね。
全裸ではしゃぐようなシーンもありましたが、これが高校生・大学生だったら嬉しいけどおじさんだし…という感じです。(個人の感想です)
最年少のヴァンサンがバス旅の途中で出会ったヒッチハイカーといい感じになったときは「あらあら~」と思いましたが。
その他
主人公マチアスの娘がやたらチームに好意的だったり、めちゃくちゃ怖いレズビアンのチームなど、女性キャラクターもいい味を出していました。
全セクシャリティ向けにアピールする方針の割には、セックスや薬物などゲイのマイナス面が強調されがちだったのは少し気になりますが、扱っていた病気がステレオタイプのHIVではなかったのが良心かなとも。
オリンピック選手にコンドームを配るなんて話もありますし、スポーツやっててビッグイベントに出るゲイは大体あんな感じになってしまうかも…というリアリティは確かに。
そういえば日本のゲイって欧米に習うことが多いのに、スポーツチームはあまり聞かないですね。バレーボールはたまに聞きますが…。僕が不勉強なだけであるんでしょうか。