テレビ朝日系・土曜23時に放送の『ザ・ハイスクールヒーローズ』はジャニーズJrのアイドル美 少年がパッケージ主演をするアイドルドラマでありながら、東映全面協力で戦隊をやるという本気さから特撮ファンに刺さりまくりの模様です。
ニチアサ関係者が集う正統派のヒーロードラマ
テレビ朝日と東映という戦隊・ライダーを作ってきた制作陣が土台として存在し、細かいところに特撮ファンへのサービスも入れつつ主役の美 少年の6人をかっこよく活躍させる絶妙のバランスで作られている印象です。
脚本に「エグゼイド」「ゼロワン」の高橋悠也氏を起用した段階で間違いない感があるのに加え、次期ライダーのおやっさん枠(というかお父さん)が決定している戸次重幸さん、ナダの長田成哉さん、ニチアサの出演頻度が高い声優の関智一さんなど錚々たるメンバー。
2話のミドヒーロー覚醒のストーリーでは、敵役の魔人にキラメイグリーンの新條由芽さんを起用するという「グリーン継承」のサービスも。(ダンス部である彼らが「キラメイダンス」を踊っているという小ネタも)
これら小ネタとは関係なく、物語そのものも学園内というフィールドを限定した闘争ではあるものの正統派の戦隊ドラマに仕上がっています。(学園設定のおかげか、敵の魔人が七不思議のような「怪異」とも取れる効果が出ているのも良いですね)
アイドルドラマは前評判が悪い
ここまでの評価の高さは純粋に「戦隊ドラマを真摯に作っている」という制作側の姿勢が功を奏していると言えるでしょう。ジャニーズJrはルックスの良さはもちろんダンスやアクションのレッスンを積んでいる実力派揃いなので、そもそも素材が悪いわけがなのです。
それでもいわゆる「アイドルドラマ」というのは質が悪い(「ファンなら」という但し書きが付く)という先入観を多くの視聴者は持っており、本作も前評判は決して良くはなかったと記憶しています。
恋愛ストーリーの少女漫画などアイドルと相性が良い原作は失敗が少ないですが、往々にして「キャスティングで数字が取れるから後はテキトーでいいや」という制作側の怠慢があり、長年のマイナスイメージを醸成しているのでしょう。
最近では『DIVE』のドラマ化が良くなかったですね。映画化やアニメ化もされていて間違いがない原作のはずが、脚本・演出があまりに悪くて原作もアイドルも良さが殺されていました。
特にジャニーズは自社制作の舞台では長年使われている脚本を代々大事に演じるなどコンテンツに対する敬意を持ち合わせている事務所のはずなので、知らず知らずのうちに積み重なったマイナスイメージは意に沿わないところでしょう。
ハイヒロは前評判の悪さを裏切った(良い意味で!)
前例から考えられていた「戦隊パロディ」のイメージを完全否定し、ガチで作ったことで前評判は杞憂となったと思います。
- アイドルドラマだからテキトーでしょ → 前述の通りガチ
- 本家とは似ても似つかない顔見せ衣装でしょ → まさかのフルフェイス
- ゴレンジャーって古過ぎるでしょ → ストーリー上意味がある
ゴレンジャーについてはストーリー上の意味はもちろんですが、戦隊を知らない視聴者へのアイコンとしても適当でした。
美 少年の年代からして直撃だったのは15年前の『ボウケンジャー』付近とは思いますが、ボウケンを出したとて「誰が分かるねん」というマニアック路線になってしまいます。ここは特撮ファンだけを喜ばせてもしょうがないでしょう。
また、いわゆる「巨大戦」がない、等身大ヒーローの物語という点でもゴレンジャーをオリジンにするという構成は特撮ファンも納得させられたのではないでしょうか。
何より主役の岩﨑大昇くんの思い切った短髪と不器用そうな表情が、80年代もしくはステレオタイプの「熱血レッドっぽさ」を体現していたのもオールドファンに響いた一要素だったのではないかと思います。
ストーリー開始時点で敵側に居る、生徒会長の浮所飛貴くんが正統派の今風美少年なのもいい対比になっていますね。
丁寧に作った作品は評価される
半沢直樹あたりで言われていたのは「面白いものを流せばテレビを見るわけで、テレビ視聴率低下の原因をネットその他に求めるのは言い訳」というものでした。同じことが(アイドルドラマを含めた)他の番組にも言えると思います。
見える範囲でTwitterなどを眺めている限りは、ハイヒロは特撮ファンが楽しんで観ているのはもちろん、美 少年を知らない視聴者から彼らが褒められる事を、美 少年ファンが心から喜んでいるという良い循環が生まれているということです。
補足として、特撮ドラマは新人起用が多いので1話時点で芝居が微妙ということも多々あるジャンルで、美 少年のちょっと拙い感じも「可愛い」と受け入れる土壌があることも追い風なのかなと思います。
ハイヒロを観た特撮ファンは、今後テレビで美 少年を見かけるたびに「ハイヒロの子たちじゃん」と無意識に応援してしまうこと請け合いです。一つ一つの仕事を丁寧にしていくことで、そういうプラスも生まれていくのでしょう。