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「窮鼠はチーズの夢を見る」を遅ればせながら観たゲイの感想文

「窮鼠はチーズの夢を見る」観たいと思っていたのにあれよあれよと日が過ぎてゆきました。

 

公開が9月11日なので1ヶ月近く遅れてしまいましたが、当時はまだ残暑厳しい気候だったのもあって、外出に二の足を踏んでいたんですね。公開終了前に駆け込み鑑賞してきました。

 

ゲイの視点も加えての感想を述べさせていただきますね。

 

www.phantom-film.com

 

 

「窮鼠はチーズの夢を見る」はBLではない

 

しっかりとした前情報もなく、知人の勧めもあって興味本位で鑑賞しましたが、男同士の恋愛を描いてはいるもののいわゆるBLのジャンル分けではなく、原作漫画はレディースコミック誌に掲載されていたものでした。

 

男性カップルが話の中心ではありますが、主人公を取り巻く4人の女性がメイン級の扱いを受けており、彼女らとの濡れ場も多いです。むしろ「恋多き男」の恋愛遍歴の中に一人ゲイが紛れ込んでいるとも言える構図となっています。

 

これでもかという男の尻の映り込み

 

まず、楽しいお話から。

 

とにかく主演の大倉くん・成田くんの生尻の映り込みが大ボリューム。濡れ場シーンはもちろん、事後や夜明けのコーヒー的なシーンでも次々に尻が映ります。正面を映してモザイクを掛けるのは映像的にも興ざめなので、こうなるのも仕方なしという事情もあるでしょうが。

 

成田くんの尻は年若く細身の体型もあってキュッと締まった良い形ですが、大倉くんもアラサーらしい肉付きどっしりとした貫禄が付き始めていてしかしセクシーさを醸し出すには十分すぎる理想の尻です。

 

何より冒頭が探偵業の今ヶ瀬の視点で、調査対象の恭一を付け狙うシーンなのですが、自転車通勤している恭一のスラックスがパツパツになっている尻をこれでもかと映していて(恐らく今ヶ瀬の視線を表現していると思われる)僕はここに物凄い共感を覚えてしまったわけです。

 

監督はゲイの心理を分かっていらっしゃる。

 

恭一はゲス野郎なのか

 

作中では主人公の恭一がやたらゲス呼ばわりされているのですが、そこに多少の疑問を禁じえなかったです。冒頭のエピソードでは奥さんが居ながら不倫していたので十分ゲス野郎ではあるのですが、奥さん以外の女(と今ヶ瀬)は、大体向こうの方から恭一に近づいてきているわけで。

 

チョロいイケメンと寝れたからと言って、その男は他の女にとってもチョロいのだということは女の方も気を付けるべきでは?という思いも一抹あります。そういった意味では「こいつやってんな」と見抜いて離婚のついでに不倫で慰謝料をふんだくろうと考えた最初の奥さんこそ恭一を最も理解していた女性と言えるかもしれません。

 

こういう方向に考えを誘導されているのも、原作者や監督の思惑通りなのかもしれませんが。男性カップルを描くにあたって、意図的に女性を(特に大学時代の元カノ・夏木などは)醜悪な存在として描いているきらいもあります。

 

身につまされるゲイの扱い

 

今ヶ瀬は恭一の優柔不断につけこんで押しかけ女房を演じ、同棲・恋人のような関係に持ち込みます。それでも恭一の「チョロさ」が治るわけでもなく、今ヶ瀬も恭一の女性関係については黙認に近いスタンスを取ります。

 

この状況については、今ヶ瀬は次々にとっかえひっかえされる女性について全て把握しており、恭一自身からもあれこれ相談すらされてしまう「強者」の側に居るように見えます。それは一時的には非常に優越感のある状況でもあります。

 

しかし、男性同士であることで恋愛の先にある「結婚」は事実上不可能であり、「永遠の二号さん」に甘んじる「弱者」であるという事を何度となく突きつけられることになります。この話運びはただ鑑賞しているだけの僕にとっても非常に身につまされました。

 

これは男女間での不倫でも似た状況ではあるのですが、「男同士だから」という伝家の宝刀を抜かれると一切の反論が許されないというのは、圧倒的な絶望感なのです。

 

恭一が一方的にゲスではないと先述しましたが、ある日突然これを言ってくるという点では、恭一はゲイにとって実に恐ろしい男です。恭一は一人の人間としては同情できる部分が多く、その点で先ほどは弁護しました。

 

しかし、真にゲスな男というのは、こういう「最大公約数の社会性を大事にし、最終的にはそちらを選択」しつつも「欲望にも忠実で、一時的に横道に逸れてつまみ食いする」こういう奴ですね…やっぱり…。多くの女性にとってもLGBTにとっても。

 

今ヶ瀬の視点~こりゃ好きになる

 

今ヶ瀬は26歳(作中で27歳の誕生日を迎える)と若く、容姿端麗であることが明言されているモテ要素の固まりです。恐らく作中で描かれていない部分でかなりの経験人数を経ていることは想像に難くありません。

 

しかしながら大学1年生の春に恭一に一目惚れしており、以降は心の中の第一位は常に恭一であったわけですから、ただでさえ長続きしないと言われるゲイの恋愛市場において、あの猫のような性格もあって「安息」を感じる付き合いはなかったと思われます。

 

それでも性欲を満たすための一夜の相手には事欠かないという、空しい状況が続いたでしょう。

 

誕生日のエピソードで「来年の誕生日も~」と恭一がポロリと吐くセリフがあるのですが、この「未来志向」は今ヶ瀬にとっては人生の中で言われたことがなく、恭一への想いがより強まった瞬間ではないかなぁと思ったわけです。

 

ただ、それは恭一が異性愛者として過ごした人生経験・恋愛遍歴の中で獲得したものであり、結婚や未来をちらつかせるという「ノンケならではの技」であることが非常に切なさを醸し出すエピソードだと感じました。

 

ネタバレ注意

 

作中で恭一の最後の女となる後輩・岡村たまきは、そこまでに登場した女性たちにあった問題点はなく、従順で自己犠牲的な性格・恭一に感謝すらする優しい母親・少しだけ年下と、結婚相手としては理想的な(都合がいい)条件を備えています。ただ一つ「恭一の方がそこまで好きではない」という点を除いては。

 

これまでの恭一であれば、社会的な成功を優先してこれ以上ない好条件のたまきとの結婚を選択したのでしょうが、最終的には自分の感情に従い、本当に想っていた今ヶ瀬の帰りを独り身のまま待つことにします。その恭一の変化をもって物語は結末を迎えます。

 

一方の今ヶ瀬も恭一の立場を考えて身を引いた後であり、以前に戻って愛のない男と寝ながら後悔するというビターな最後を迎えます。レーティングが15禁であることもあり、変にくっついてハッピーエンドにするよりも余韻のあるラストかなと思います。

 

途中の3者・4者面談の修羅場をハイライトにしている感想も拝見しましたが、僕としてはあそこはそこまで…。

 

今ヶ瀬を振った事を後悔した恭一が、無理してゲイバーに行ってオエッとなるシーンもありましたが、アレもアレでいきなりハードな店に行っちゃう「ノンケあるある」ですね。もっと静かで悩み相談に乗ってくれるような雰囲気のゲイバーだってあるのですが、ノンケはそんな情報は知りえないですからね。

 

個人的には、趣味(お尻)と実益を兼ねられ、非常に良い映画を観たなという感想です。

 

※商品紹介は原作コミックスを推したい気持ちもありますが、大倉・成田両氏をアイキャッチに致したく、2つとも掲載させていただきます